平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
世界遺産
浄土思想はインドから渡来し、阿弥陀如来を信仰し、西方極楽浄土に往生することを目指す思想である。平安末期に流行した末法思想の流行によって全国に浸透していった。浄土思想は来迎図の作成や阿弥陀堂の建立、浄土式庭園の作庭などにより具現化されていった。特に浄土式庭園は、建造物群、池、橋などが織りなす景観を浄土と関連付け、その存在を視覚的・体感的に認識させようとすることを特徴としている。
世界遺産の範囲
コア地帯 | 中尊寺 137.2ha 毛越寺 22.7ha 観自在王院跡 3.8ha 無量光院跡 4.2ha 金鶏山 8.3ha 計176.2ha |
緩衝地帯 | 5989.1ha |
合計 | 6008.8ha |
中尊寺
中尊寺は850年、比叡山延暦寺の高僧である慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって開かれた。12世紀初頭、奥州藤原家初代・藤原清衡が平泉の地に仏国土(浄土)を表す中核の寺院として大規模な堂塔を造営した。中尊寺は平泉の中心部北側の関山丘陵に位置する。中尊寺は相次ぐ戦乱の犠牲者たちが敵味方の区分なく浄土に往生できることを目指して建立された。
中尊寺金色堂 (国宝) (岩手)
釈尊院五輪塔 (重要文化財) (岩手)
願成就院宝塔 (重要文化財) (岩手)
毛越寺
毛越寺は奥州藤原家2代目・藤原基衡が12世紀中頃に造営した寺院である。毛越寺は特別名勝に指定された毛越寺庭園と特別史跡に指定された毛越寺境内附鎮守社跡を含む。特に毛越寺庭園は12世紀における浄土思想を表現したものとされている。
観自在王院跡
観自在王院跡は奥州藤原家2代目・藤原基衡の妻が毛越寺の東に接して建立した寺院跡である。庭園南側に大小の阿弥陀堂が設けられており、阿弥陀如来の極楽浄土の表現を意図して浄土庭園が設けられたとされている。
無量光院跡
無量光院跡は奥州藤原家3代目・藤原秀衡が12世紀後半に建立した寺院の跡である。西に金鶏山が見え、庭園に浮かぶ大小3つの島に翼廊付の仏堂と拝所・舞台を設けた空間構成が浄土庭園の最も発展した形態と考えられている。
金鶏山
標高98.6mの山で、浄土思想に基づいて造営された政治・行政上の拠点である平泉の空間設計の基準となった信仰の山とされている。
金鶏山 (史跡)
世界遺産登録までの経緯
2006年12月に名称を「平泉-浄土思想に関連する文化的景観」として、中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山、柳之御所遺跡、達谷窟、白鳥舘遺跡、長者ヶ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡と農村景観の計10物件を含む推薦リストが世界遺産センターに提出された。
2008年5月に国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)によって次の理由により「登録延期」の勧告が発表された。
2008年7月の第32回世界遺産委員会で審議された結果、ICOMOSの勧告通り「登録延期」とされた。
2010年1月に、達谷窟、白鳥舘遺跡、長者ヶ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡と農村景観を世界遺産の推薦リストから除外し、名称を「平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として再申請することになった。
2011年6月の第35回世界遺産委員会(パリ)で「平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として世界遺産リストに登録されることが決定した。しかし、柳之御所遺跡が世界遺産リストへの登録が次の理由から除外されることになた。
2008年5月に国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)によって次の理由により「登録延期」の勧告が発表された。
- 奥州藤原氏の文化を受け継ぐ独自の存在としての証明が不十分である。
- 平泉の景観が人類史上、極めて優れた空間造形であることの証明が不十分である。
- 骨寺村荘園遺跡の農村景観は、中尊寺には関係するが、浄土思想とのつながりの証明が不十分である。
- 平泉の浄土思想について、国を超えた世界的意義の証明が不十分である。
- アジアなど他の仏教遺跡との比較研究が足りない。
- 浄土思想の観点から推薦する史跡の範囲の見直しが必要である。
- 個々の史跡と周辺の緩衝地帯の区分けが不十分である。
2008年7月の第32回世界遺産委員会で審議された結果、ICOMOSの勧告通り「登録延期」とされた。
2010年1月に、達谷窟、白鳥舘遺跡、長者ヶ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡と農村景観を世界遺産の推薦リストから除外し、名称を「平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として再申請することになった。
2011年6月の第35回世界遺産委員会(パリ)で「平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として世界遺産リストに登録されることが決定した。しかし、柳之御所遺跡が世界遺産リストへの登録が次の理由から除外されることになた。
- 浄土思想と日本固有の思想の融合を示す遺跡とは認められない。
拡大登録を目指す物件
世界遺産リストへの登録決議を受けて、今後の拡大登録を目指すことになった。対象の物件は柳之御所遺跡、達谷窟、白鳥舘遺跡、長者ヶ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡と農村景観の5件ある。
関連リンク
参考ページ
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